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食品衛生・厨房衛生
食中毒を防止するために、正しい知識と対策を身につけよう。
「食中毒といえば夏」というイメージをお持ちの方も多いのではないでしょうか。もちろん、細菌の繁殖が活発になる夏は、「細菌性食中毒」に気をつけたい季節。ですが、注意しておきたいのはこの時期だけではありません。お客様に安全で美味しい料理を安心して食べてもらう飲食店・厨房施設にとって、「食中毒」はあってはならないこと。だからこそ、一年を通して油断せずに衛生管理に取り組むことが大切です。そのために、まずは食中毒の知識やその対策、原因を知ることから始めませんか?
起こそうと思うお店はないはず!
だけど、発生する食中毒。
平成25年~令和4年の食中毒発生件数のグラフをみてもわかる通り、食中毒は毎年数多く発生しています。近年、減少しているものの、これはコロナ禍における飲食店の営業時間短縮や、手洗いなど衛生対策の徹底が影響していると考えられるでしょう。しかし、令和4年の発生件数をみると、前年よりも増加。徐々に日常が戻りつつある今、食中毒を発生させないためにも、「自分のお店は大丈夫」と油断せずに食品衛生管理に取り組んでいくことが大切です。
夏だけじゃない!食中毒は1年を通して注意したい。
令和4年の月別食中毒発生件数をみると、食中毒は1年中発生していることがわかります。食中毒は高温多湿の夏に特に注意しておかなければいけないこととお考えの方もいるかと思いますが、実は「夏だけ」ではなく、「1年中」発生すると意識しておかなければいけません。そしてスタッフ全員が安全な食品を提供するという自覚のもと、気を引き締めて食品衛生管理に取り組むことが食中毒防止に欠かせません。
食中毒を防止するために知っておきたい知識と対策をご紹介!
このように食中毒は季節を問わずどのお店でも発生する可能性があります。だからこそ、食の安全を守るためには徹底した衛生管理が必要です。そのために必要な知識と対策をご紹介します。
Point1 食中毒の「知識」を身につける!
令和4年の病因物質別発生状況を見てもわかる通り、ひと口に食中毒といっても、原因はさまざま。原因によって、「微生物による食中毒」「化学物質による食中毒」「自然毒による食中毒」「寄生虫による食中毒」「アレルギー様食中毒」に分類されます。食中毒を防止するためにも、まずは、それぞれの病因物質について知っておきましょう。
代表的な食中毒の原因菌、ウイルス
細菌性食中毒(感染型)カンピロバクター
鶏、牛、豚等の家畜や犬等のペットから多く検出される病原菌。そのため、食肉類(鶏肉や牛レバー等)の生食品を媒介として発生します。
細菌性食中毒(感染型)サルモネラ菌
卵や生肉、およびその加工食品、あるいは調理器具などが汚染されていると発生します。人や動物の腸管内に多く存在し、ねずみやハエ、ゴキブリなどを媒介として広がります。
細菌性食中毒(食品内毒素型)黄色ブドウ球菌
おにぎりや弁当、生菓子など手指が関係する食品が媒介となるケースが多く、とくにキズが化膿した部分や鼻、ノドなどの粘膜にも多く分布しています。増殖する際に毒素である耐熱性のエンテロトキシンを産生しますが、5℃以下ではほとんど増殖しません。
細菌性食中毒(感染型)病原性大腸菌
大腸菌は幅広く分布しており、あらゆる食品に繁殖する可能性があります。その中でも人に対して病原性があり総称として病原性大腸菌と呼びます。牛などの家畜の糞便汚染された食品や井戸水や貯水槽内の水を通じて集団発生するケースも多く見られます。
細菌性食中毒(感染型)ウェルシュ菌
人および動物の糞便や土壌、下水等の自然環境に広く分布する耐熱性、嫌気性の細菌。カレーライス、シチュー、スープ等同一容器内で大量に調理され、長時間室温で放置された食品中で増殖します。
細菌性食中毒(食品内毒素型)セレウス菌
土壌、河川等の自然環境に広く分布する病原菌で、症状には嘔吐型と下痢型の2種類があります。炒飯など加熱した食品が原因食品となります。
細菌性食中毒(食品内毒素型)ボツリヌス菌
海水、湖、川等の泥砂及び、そこに生息する魚介類等に広く分布。一定期間保存し、熱処理しないで食べる食品や保存発酵食品、まれに真空パック食品、びん詰・缶詰食品でも発生します。
ウイルス性食中毒ノロウイルス
二枚貝(生ガキなど)を生食することによって感染した感染者の便、吐物などから広範囲に感染。二次感染により発生している場合は、あらゆる食品から感染する可能性があります。
寄生虫による食中毒アニサキス
アニサキスは活魚の内臓に寄生していますが、鮮度が落ちると筋肉内にも移動するため、できるだけ新鮮なうちに内臓を除去しましょう。
このほかの病因物質など、食中毒の種類について詳しく知りたい方はこちらをチェック!
Point2 食中毒の「対策」を身につける!
食中毒を予防するためには、細菌を「つけない」「ふやさない」「やっつける」ことが大切です。この食中毒予防の三原則を徹底して食品衛生管理を行うことが欠かせません。
1.つけない
細菌やウイルスをつけないように、食材、従業員、器具・機械類、施設を清潔に保ちましょう。
■つけないためのポイント
●食材の衛生管理
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原材料の食材は充分に洗浄を行う
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フタやラップをして食材に微生物や汚れをつけないようにする
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食材が周囲から汚染を受けずに清潔に管理できる場所に保管する
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適切に管理ができなかった場合の対応を決めておく
●調理手順の管理
調理済み食品の取り扱い時や盛り付け工程では絶対に下処理を行わない
下処理調理器具と食材を混在させない
●従業員の衛生管理
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清潔なユニフォームの着用
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耳までカバーする帽子の着用
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靴を履き替える
※履物の交換が困難な場合には履物の消毒
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必要に応じて
手袋やマスクを着用 -
適宜手洗いを行い、
手指を介しての汚染を防止する作業をはじめる前、作業内容を変えた時、用便後などは衛生状況をチェックし、「正しい衛生手洗い」で必ず手洗いをしましょう。
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従業員への健康診断、
検便検査を定期的に実施伝染性の疾患や食中毒菌を持った人が食品を取り扱うことを防ぐ
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適切に実施できていない場合の
対応を決めておく
●器具・機械類の衛生管理
◯床や周囲の環境から汚染を受ける心配がない場所に保管する
◯器具を保管する場所は適宜清掃や洗浄を行い、器具類を清潔に維持する
◯調理器具を使い分ける
まな板、包丁は複数を用意し、食品別(肉用、魚用、野菜用)や上処理、下処理用で使い分ける
◯保管管理や洗浄・消毒が手順通りにできなかった場合の対応を決めておく
施設の衛生管理
◯施設の病原菌を媒介するネズミや害虫の管理(記録を残して保管)
◯施設の清潔な管理
◯施設の給排気の管理(結露の対策)
◯衛生管理の実施計画(いつ、どのようにするか)を決めて実施(記録を残して保管)
2.ふやさない
調理後、すぐに提供、食品を冷蔵するなど、細菌が増えにくい状態で保管することで、食品中の細菌を増やさないことが大切です。
■ふやさないためのポイント
●長時間放置しない
温度、水分、栄養が最適であれば、細菌はどんどん増えます。調理後はすぐに提供しましょう。
●適切な保管を実施
食品の保存温度を守り、冷蔵庫や冷凍庫で保存します。
※庫内温度の基準温度を定め、毎日記録します。異常があった場合は庫内にある食材を使用するかしないか決めます。
●適正量を仕入れる
食中毒菌はこうして増える!
食中毒菌の多くは食品中で増殖して発症菌数になるか、増殖する際に毒素を作ることで、食中毒を引き起こします。細菌が増える条件は栄養、水分、温度(+時間)です。このどれかひとつでも欠けると細菌は増殖できません。
3.やっつける
ほとんどの細菌やウイルスは加熱によって死滅します。そのため、適切な温度で加熱殺菌しましょう。また、まな板や包丁などの調理器具に付着した細菌やウイルスを殺菌することも忘れずに。
■やっつけるためのポイント
●加熱殺菌
食品等に付着したり、増えてしまった細菌を加熱することによって殺菌します。
食品の中心温度が75℃で1分間以上加熱する
(中心温度計で測定)
※ノロウイルス対策の場合は85℃~90℃で90秒間以上
殺菌条件(温度・時間)が基準以下だと菌が残ってしまうので、この条件を守りましょう。
加熱調理温度の確認は五感で判断するとともに、定期的に中心温度を測定し、基準以上であるか確認しましょう。
●洗浄殺菌
調理器具等は、洗浄後、消毒剤で殺菌します。
洗浄が充分でなく、汚れが残っていると蛋白、脂肪等の汚れが消毒剤から菌を守り効果を発揮しません。